手作り石鹸のジェル化(結晶化もしくは液晶化)

ーーー石鹸のジェル化(結晶化もしくは液晶化)現象についてーーー

今回は石鹸を作る方々には基本的なくだらない内容になります(‐人‐)
ここでは特に「ジェル化(結晶化もしくは液晶化)」について取り上げます。

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出来上がりがムラになる理由

採取地も採取時期も同じ、つまり全く同じロットの材料を使って、同日に数分違いで仕込んだのに、出来上がった石鹸の各ロット、もしくは同じロットの個々の見た目にバラ付きが見られることがあります。
または、一つの石鹸自体に濃淡のムラが出ることもあります。
均一に出来上がっていないことにがっかりします。
これは、ケン化反応時(保温時)に起こるジェル化(結晶化もしくは液晶化)現象が原因であることが多くあります。

石鹸の仕込み時の自然発熱と保温について

オイルと強アルカリ水を反応させて石けん分子ができたものが石鹸です。
石鹸を仕込むに当たり、
「常温のオイル」と
「湯煎した融点の高いオイルやバター」と
「冷ました水酸化ナトリウム水(苛性ソーダ水)」
を混ぜた時点で相当な温度まで自然発熱しますが、攪拌してトレースが出た石けんを型に入れて保温箱に移したら、更に発熱します。

約24時間、保温箱に入れる理由は、「オイルとアルカリが化学反応を起こして石鹸が生成されるケン化反応」を促進するためです。
ケン化反応は温度が高いほど進みやすく、保温することで反応がじっくり進んで石鹸が固まっていきます。
また、保温することで材料の分離を防ぎ、全てが均一に混ざったまま固まってくれます。

ジェル化(結晶化もしくは液晶化)

仕込んだ石鹸タネは、オイルとアルカリ水が反応していく過程で石けんタネは自然発熱を起こして60℃以上になり、大抵は中心から透明っぽい状態になっていきます。

時に全体が均一なジェル状になるジェルステージを迎える場合があります。
これを石鹸を作る方々の間では「ジェル化」と呼ばれているようですが、ジェル状やゼリー状になるわけではなく、別の言い方をすると「結晶化(もしくは液晶化)」のような現象です。

※ 厳密にいえば、
結晶化=物質を構成する原子や分子やイオンが3次元的な規則正しい周期構造(結晶格子)で固体になる現象。
液晶化=固体(結晶)と液体(等方性液体)の中間の液晶状態になる現象(向きは揃っているが液体のように分子の位置がバラバラで流動性あり)※

ジェル化が起こると、出来上がりも若干透明化するのですが、それは全体的であったり、部分的であったり、状態は様々です。

これが出来上がった石鹸の「違い」や「ムラ」の大方の原因になります。

ジェル化の理由

ジェル化は、石鹸を仕込んで60℃以上に自然発熱した後、数時間40℃前後の保温状態が保たれる場合に起こるようです。
出来上がりの石鹸にも透明感があります(それは部分的な場合もあります)。

ジェル化が起こった場合と起こらなかった場合の出来上がりを例えると、氷を作る時に「急速に凍らせると不透明な白い氷ができる」「ゆっくり凍らせると透明な氷ができる」みたいな感じです。

コールドプロセス製法の場合、オイルを温めずに仕込んで自然発熱するに任せるので、絶対に数時間40℃以上を保てるかどうかは外気や湿度にも影響されます。
冬期は保温箱の保温を強化するために60℃くらいの湯を入れたペットボトルを入れるなり、フカフカの大きな膝掛けを巻き付けるなどの工夫をしますが、中の温度までは分かりません。
温度計を入れておいてフタを開けて確認すると、フタを開ける度に急激に温度が下がるので本末転倒であります。
よって、保温箱内の温度については操作不能につき(私には)、いわば自然任せになります。

ジェル化の原因は気温、湿度などの環境だけではなく、私的には材料にも左右されると感じています。
石鹸を作る室内はできるだけ常に冷暖房で同じにしてはいますが、それでも夏の暑い時期ほどにジェル化の可能性が高くなり、湿度は気温に関わらず大敵ではあります。

材料でいえば、長年の経験上の妄想かも知れませんが、オプション材料としてハーブを練り込んだ石鹸はジェル化(結晶化)しやすいと感じています。
多分にハーブの活性が強い場合に急激な自然発熱が起こりやすく、発熱持続が長いのではないかと思います(思うだけで出鱈目かも(-人-;))。
また、乳製品、糖質製品も温度を上げやすくしてしまうようです。

ジェル化した石鹸と非ジェル化石鹸の使い心地や効能はほぼ同じ

ジェル化現象は最適な状態で鹸化が進んでいることに繋がり、分子が綺麗に整列した状態になっているそうです。
これを理想的として、ジェル化した石けんは特にマイルドな石けんになるという説もありますが、実質は非ジェル化の石けんとの差はないと言い切る説も多くあります。

コールドプロセス製法の場合、ジェルステージを迎えようが迎えまいが、保温状態がよければ問題はありません
(ホットプロセス製法の場合は100%ジェル化しますが、オイルの良質な組成が壊れます。)

私自身、長年の個人的体感に於いて、効果効能、使い心地に「ジェル化した石鹸と非ジェル化石鹸に差違なし」と考えます。

ジェル化のメリット~ソーダ灰について

ジェル化すると石けんの表面に白いソーダ灰がつきにくい点は魅力です。

◾ソーダ灰とは
ソーダ灰とは、白色の結晶性粉末で、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)のことです。
ソーダ灰は無水和物であり、水分子を含まない化合物(水分子が結晶構造に結合している水和物の対義語)で、水和物に比べて吸湿性が高いため、乾燥剤などに利用されています。

ソーダ灰自体は石けん粉なので、そのまま使っても問題はありませんが、水に溶けると強いアルカリ性を示すので、石鹸表面にソーダ灰が出来上がっている場合は、表面を一度、水に溶かしてからの使用をお勧めしています。

※ ソーダ灰が出来上がった石鹸自体の中身には影響はありません。

◾ソーダ灰ができる理由
ソーダ灰は、保温箱に入れた後になんらかの理由で一気に温度が下がった時にできてしまいます
特に冬期などの寒い時期は保温箱を途中で開けると、二酸化炭素と結合してソーダ灰になってしまうので、できるだけ開かないようにしていますが、最初のケン化の自然熱で石鹸が汗をかいていることがあるので、ティッシュで軽く押さえて汗を拭うために開けてしまうことが多々あります。
(冬期でもジェル化した場合はこの影響がない様子です。)

◾ソーダ灰と重曹
石鹸を作り始めた頃に石鹸の表面にできる白い粉について調べたら、「重曹」であると書いている本がありました。
が、後々、また調べてみると、ソーダ灰と重曹は化学式とアルカリ性の強さが違います
・ソーダ灰は炭酸ナトリウム(\(Na_{2}CO_{3}\))でpHが11。
重曹は炭酸水素ナトリウム(\(NaHCO_{3}\))でpHが約8。
・ソーダ灰は洗浄力が強く、重曹には研磨作用があります。
(情報というものは多すぎて煩雑でもあり、年々、より正確な内容を提供してくれる場合もたまにあるので疑問を感じたら再度調べると、上記のような例があります。)

ジェル化のデメリット

・過冷却
石鹸を仕込んだ後、通常、オイルが固まる際にできる中心の核から個体の結晶化が進みますが、ジェル化した場合に稀の稀にに凝固点以下に冷やされているにも関わらず、時間が経っても核がなかなかできずに液体のままでいる過冷却が起こり、個体化しにくくなります
過冷却の原因は、オプションする素材(後入れの素材)に多く水分を含む場合などに起こってしまう様子です。
(この場合、3ヶ月ほども経過して使ってみると、さしたる問題はなく出来上がってはいます。)

・ブサイク
また、ジェル化の最大の頭痛のタネは見た目に出ます。
ジェル化が不均一に起こった場合、透明な部分と不透明な部分が出たり、石鹸の内部と外部で色が異なっていることもあります。

これらは品質には全く問題ありませんが、ルッキズムを重視する場合にはデメリットです。

・変香
ジェル化による急激な温度の上昇は、精油による着香が飛びやすかったり変香したりすることもあります。

・嬉しくない
なので、申し訳なくも、同じ商品なのに常に同じ状態ではなかったり、極端に不細工な見た目の提供になることがあるので、個人的にジェル化はあまり嬉しくはありません。

重要な長期間熟成

ジェル化してもしなくても、適切な保温を経て、長い熟成期間を持たせることでアルカリ度はしっかり下がってマイルドになり、水分が飛んで綺麗に固まっていきます。
結果、見た目以外はどちらも同じく使い心地滑らかで肌に優しい石鹸になります

写真にしても分かりにくいので伝わりにくいと思い、諦め半分、いや、諦め九分ですが、現在時点で「同日、同材料」で作ったにも関わらず違いが出ているものを一応、撮ってみました。

まだ出来上がらない熟成中で、表面の形成などはしないままの素顔状態です。

  • ◾「ハンガリーハーブsette 」

     
    同じ日に6ロット作ったうちの3ロットの各3個です。

     
    ジェル化透明系。
    ほぼ全体がジェル化しました。
    外側のフレームだけ不透明になっています。

     
    半分ジェル化。
    単一石鹸の中で透明と不透明のムラが出ています。

     
    不透明系。
    ジェル化しなかった石鹸です。
    表面、均一な色合いです。

  • ◾アボカドキュア

     
    こちらは一番左の長方形と真ん中のハート型は同日、一番右のハート型だけ1週間後に作りました。
    材料は全て同じですが、見た目にずいぶんな差が出ました。

     
    家族用なので大きめのザク切りです。
    最も明確に全体的にジェル化したため、美しいアボカドグリーンが映えました。

     
    上記と同じに作ったはずなのですが、なんと、表面だけアボカドグリーンが色飛びしたかのように褪せてクリーム色になっています。
    ソーダ灰は全くありません。
    見た目に反して中途半端にジェル化したためと思われます。
    使っていくとグリーンが発色します。
    型出しした時はもっと黄色っぽく若々しいクリーム色でしたが、乾くにつれて少しくすみグリーム色になりました。

     
    非ジェル化石鹸です。
    不透明なグリーン色になりました。

ご挨拶

もっともっと早くに書くべき内容でしたが、今になりました。
商人タイプではないので、ブログと石鹸屋さんを関連付けることに違和感と嫌悪感を持っているためです。
が、ここに書かずにどこに書く?と思い立ちました。
ご覧いただきましてありがとうございます。

一つの石鹸がムラになっていたり、中央からフレーム近くまで透明っぽいのにフレームだけが不透明であったり、同種類複数個の中で異端な見てくれのものがあっても、13年間、一度も直接疑問を投げかけられることなく、懲りずに何度もご訪問いただいている皆さまに感謝いたします。

以上、「?」に対しての解答になりましたら幸いです。

見てくれより中身と使い心地と後肌と健やかさを保つことにのみ力を注ぎ、材料には糸目を付けず、ふだんのザツな性分とはウラハラに正しくコツコツと製造しております。
ご愛用いただいている皆さま、ありがとうございます。

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