ーーー乾燥を感じたらセラミドをーーー
10月初旬のこと。
いつまでも蒸し暑かったり急激な寒さを感じたり朝晩の寒暖差に晒されたりと、不安定な気温、湿度が続きました。
ふだんは他に気を取られてばかりでそうそう鏡とにらめっこしませんが、こんな時期、昨年も一昨年も、私は皮膚の薄い目の下当たりにショワッと乾燥ジワを発見してアワアワアワヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
※今回、面倒な内容を後に回して先に商品の感想からはじめたのでお話が前後しています(‐人‐)
目次 / contents
セラミドだ!
気温の変化の中で、身体は徐々に秋モードだってのに外気に晒したままの無防備な顔。
夏と同じ軽い顔ケアをしていたら、真夏の激汗による塩害だの紫外線によるダメージだので悲鳴を上げて当たり前。
服を切り替えるようにケアも切り換えるべし。
だからゴールドプロセス石鹸はシトシトレシピに、ブレンドオイルにはローズヒップオイルを加えてパワーアップ&ミルフィーユ重ね塗り。
これでだいたいは治まります。
でも、何か
何かもう一声欲しい。
浅くても淡くても、乾燥ジワを舐めてはいけません。
貼り付くと回復に時間がかかるので、いや、年齢的にはもはや回復しないかもなので、今のうち今のうちと、アワアワアワのある日中、仕事をしながら頭の隅でどう対処すべきかとグルグル。
ああだこうだといろいろ思い付いたつもりで仕事帰りにオーガニックものを取り扱うお店に買いに寄ったけど、何か違うなー、と脳ミソが停止。
そして思い出しました。
ふだんは肌環境重視ゆえ、「その場しのぎ」より「絶対的改善」を求めて、比較的「余計な成分配合のないオーガニック化粧品」を選ぶのですが、何かを早くに改善したい時、その時だけ、対症療法如し即効性を持つ化粧品も選択範囲に入れます。
その場合は「コンセプトが何かよくわからないもの」ではなく、主要成分がはっきりしたものから選びます。
対症療法って、結局その場しのぎなんだけど、即効力に於いては凄まじく、「今痛い」から逃れるには打ってつけ。
例えば脳溢血や心不全なのにゆったり改善する自然療法を選んではいられない、みたいな感覚で、藁をも塚みたい時には必要です。
私は不自然を知りながら、ケミカル化粧品の中で「特にその場を凌いでくれる何か」を探すのです。
そしてある程度の治癒が見えたら、不自然のせいで起こった狂ったバランスを整えるために自然のパワーで改善します。
日進月歩するサイエンスの力と自然の力とのイイとこ取り。
そして歩きながら突然閃きました。
「あ、そうか、今、多分に足りないのは細胞間脂質、セラミドやん!」。
急に乾燥し出した
よく分からないけど乾燥している感じ
などというのは、細胞間脂質不足という場合が多いのです。
角質層は「天然保湿因子を含む角質細胞(レンガ)」と「角質の間を細胞間脂質(モルタル)」で満たされた構造。
細胞間脂質が不足することは、つまり繋ぎのモルタルがスカスカ同然であり、角質層の構造がガタガタのポンコツに。。
私はこの時こそ、季節の変わり目ならではのポンコツだと悟りました。
細胞間脂質の脂質組成は
- セラミド=50%
- 遊離脂肪酸=20%
- コレステロール=15%
- コレステロールエステル=10%
- 糖脂質=5%
ということで、補いたい細胞間脂質といえばセラミド。
セラミドは肌内部の潤いを保持し、外からの刺激を侵入させないバリア機能を維持する重要な成分です。
表皮セラミドの産生
ヒトの皮膚は乾燥ストレスに対抗するために、長い進化の過程でセラミドを恒常的に産生する能力を持ちました。
このセラミドはどのようなプロセスで産生されるのでしょうか。
表皮細胞イコール角化細胞(ケラチノサイト)は健康であれば常に新陳代謝(ターンオーバー)を繰り返しています。
表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞
↓
新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられる
↓
各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化
↓
ケラチンから成る角質細胞となって角質層に留まる
↓
角片(体表での垢、頭皮でのフケ)として剥がれ落ちる。
そしてセラミドの前駆体(スフィンゴ糖脂質の一種であるグルコシルセラミド)も表皮細胞と同様に新陳代謝を繰り返しています。
基底層で産生
↓
有棘層から顆粒層へと分化
↓
角質層において分解酵素であるβ-グルコセレブロシダーゼを介してセラミドに分化。
角質層に存在するセラミドの全ては「グルコシルセラミド」から産生されます。
(セラミドNS(セラミド2)及びセラミドAS(セラミド5)の2種類はスフィンゴ脂質の一種であるスフィンゴミエリンからも産生されるそうです。)
セラミドが減少する原因
セラミドが不足する原因は、厳密には解明されていないそうですが、考えられるとしたらば。
セラミドが減少する原因その1・加齢。
年齢が増えるとは反対にセラミドは減ります。
50代ではなんと、20代の半分になってしまうそうです。
私の年齢が増えて一緒に増えるのは役に立たないも含む経験値と投げ飛ばしたい反省だけ。
体からははなんでも減るのよね。
セラミドが減る原因その2・肌のターンオーバーの乱れ。
肌が生まれ変わる新陳代謝がうまくいかなくなると、セラミドを作ることができなくなるそうです。
セラミドが減る原因その3・過剰な洗顔。
物理的に強く洗う、脱脂力の強い洗浄剤で洗う、1日に何度も洗うといった、過剰な洗浄はセラミドを減らしてしまいます。
私自身に単純に当てはめるとしたら、「その1」で、この時期に顕著に体感します。
ならば肌の外側から補ってしまいましょう。
選ぶはヒト型ナノセラミド
さて、セラミドには天然、合成疑似、植物、バイオなど、本当には括りにくいのですが、多種類あります。
(もう少し詳しい内容(めんどくさい内容)は下記「9・セラミドって?」へ。)
セラミドは、「スフィンゴシン(第一級アミノアルコール)と脂肪酸が酸アミド結合したスフィンゴ脂質」という物質群の一つです。
化粧品成分としてのセラミドのほとんどは化学合成品です。
セラミドの名称はそれぞれの構造の違いから分類されています。
ヒトの肌には、300種以上のセラミド分子が確認されていて、これらと同じ構造をもつセラミド原料を「ヒト型セラミド」と呼びます。
現時点で、肌に元々存在するセラミドに最も近いのはバイオセラミドである「ヒト型セラミド」といわれています。
ヒト型セラミドは他のセラミドに比べると細胞間脂質のセラミドと親和性が高いため、断然高い効果が期待できるのだそうです。
しかしながら、これは「ヒト型ナノセラミド」でなければ効果は淡いのです。
アスタリフト・ジェリーアクアリスタ
ピントが合えばかなり効果あります
ヒト型ナノセラミドというとメジャーどころで思い浮かぶのは富士フイルム。
富士フィルムの化粧品といえば2007年に発売されたアスタリフト。
アスタリフトのジェリーアクアリスタのヒト型セラミドは、厳密には「ヒト型ナノセラミド」「ヒト型アシルナノセラミド」です。
それは「20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型セラミド」と「20ナノメートルサイズにナノ化されたヒト型ナノアシルセラミド」。
配合量も
「ヒト型ナノセラミド1%+ヒト型ナノアシルセラミド0.1%」
と効果が期待できる値として理想的。
(※「ヒト型ナノセラミド」と「ヒト型ナノアシルセラミド」については「6の効果が期待できるヒト型セラミドとは」へ。)
アスタリフトは発売された頃に一通り使ってみたけどピンと来ず、2010年に最初のセラミドジェル「旧ジェリーアクアリスタ」も使ってみたけど、当時の環境のせいか、使い方が悪かったのか、まだセラミドが不足してはいなかったのかで印象に残らないままでした。
(現在のジェリーアクアリスタは2015年にリニューアルされています。)
けど、今に突然閃いた「セラミド=ヒト型ナノセラミド=アスタリフト=ジェリーアクアリスタ」。
なんたって、粒子を細かくした浸透技術に優れている点も魅力的。
タイミングよく閃いた道々の通りがかりに売っていて、急にその成分内容への期待感が膨らみ、「今のうち今のうち」の気持ち強く、とりあえず購入しました。
期待感満載だから最初から60グラム。
これを書いているうちに約1ヶ月経ってしまったので、先に結果をいいます。
朝晩しっかり馴染ませていると、季節変わりに感じた乾き感は立ち消え、乾燥ジワは早々に引っ込みました。
伸びのよいジェルではないのもあって、規定量より多く塗りこめたので、もう数日分しか残っていません(一応2ヶ月分だそうです)。
乱暴に多量使ったわけではなく、全顔に伸びる前に体温でとろけて浸透したような状態になるので、ちゃんと塗るには規定量では少ない感覚なのです。
といったブッこみセラミド療法は、今季の私にピントが合ったようです。
冒頭に書いた通り、これを対症療法とし、回復した今はほとんどの日を
「ヘーラールーノ、自作ブレンドオイル、クリーム(今はアムリターラのエイジソリューションクリームがメインです)」
という自然療法のみで快適に過ごせています。
機能的な台座
蓋を開けると商品そのものと共にジャーを置くアクリル台があって、「ゲランのパッケージ如しかよ、無駄な。」などと思ったら、スパチュラを置く窪みがあるので一転、「便利じゃん♪」。
テクスチャー
以前と変わらずアスタキサンチンの鮮やかなオレンジ色のジェル。
今や誰もがご存知のようにアスタキサンチンは鮭やエビ、カニなどに多く含まれている抗酸化成分であり、天然色素カロテノイドの一種です。
もちろん顔は染まりません。
いわゆる記憶形状ジェルであり、仮にスパチュラをグサグサ刺してグチャグチャにしても、放置しておけば容器の中でフラットに戻ります。
先に書いたように柔らかくはなくトロトロでもない、どちらかというとコリンとしたジェルです。
ちょっと極端だけど、滑らかなゼリーではなく寒天といった感じ。
コリンとしているけど肌に乗せると、いきなりでもなく遅すぎもなく、頃合いよく体温でジュワンとトロけるような感触になりますが、そこで素早く浸透したかのように伸びにくくなるので、私はもう一匙、追加していました 。
抗生物質じゃないけど、私はどのような化粧品も最初は特にガッツリ使った方が効果実感までが早いと感じるので、規定量をオーバーすることに躊躇はありません。
(多分に有識者の方々はオーバー量には意味がないとおっしゃるでしょうが、私はあくまでも体感を重視します。)
特にお風呂に浸かりながらオイルマッサージをして温まった肌に直接塗るとグングン入る感覚があります。
あるいは軽いスクラブの後は、いかにも細胞間を満たしていく感覚すらあります。
後肌に安心膜
そして馴染みすぎて何処に消えたか分からないタイプではなく、生体肌にうまく寄り添って乗っている安心感たっぷりの膜、造語ですが「安心膜」のような覆いがあります。
わりと厚みのある膜(規定量でも先行美容液ジェルとしては厚みがあります)は人によっては好みではない膜かも知れないですが、ケミカルブランドの中ではビニール的ポリマー的閉塞感のみな膜感の不快さは淡いと思います。
個人的に悩ましい使用順、その結論
洗顔後に先行オイルをお使いの方もあると思われるので書きます。
(私のブレンドオイルを使っていただいている皆様にも。)
ジェリーアクアリスタは先行美容液(ジェル)に当たり、ナノ化した成分が角質層の必要なところに充分に届くように洗顔直後に使用するものとあります。
私にとっては、洗顔直後の「ヘーラールーノ→自作ブレンドオイル」が洗顔を含めた一連の括りなので悩ましいところ。
私が洗顔直後に精油ブレンドオイルを使う理由は、まず、肌に精油のパワーをダイレクトに入れるためと、オイルの力で精油をキャリーしながらその後に使うものの肌馴染みや親和力を上げるためなので、たいていの「洗顔直後使用先行美容液(導入系含め)」はその後に使いますが、このジェリーアクアリスタはそれらとは性質や質感が違う点で果たしてそれで良いのかどうか分からず、
「洗顔→ジェリーアクアリスタ→ヘーラールーノ→ブレンドオイル」
または。「洗顔→ヘーラールーノ→ブレンドオイル→ジェリーアクアリスタ」
の2通り試してみました。
まさかアイソトープ検査をするわけにもいかず、どちらがどのように浸透して、血流や代謝などによる機能的な変化するのかは想像するしかなく、後肌感からの想像ですが、
「洗顔→ジェリーアクアリスタ→ヘーラールーノ→ブレンドオイル」
の方がジェリーアクアリスタが浸透していると感じます。多分(^-^;)。
理由は、
「洗顔→ジェリーアクアリスタ→ヘーラールーノ→ブレンドオイル」の方がその後の全てのケアの後肌が軽く、つまり、ジェリーアクアリスタが浸透した感覚だからです。
「洗顔→ヘーラールーノ→ブレンドオイル→ジェリーアクアリスタ」の方は余分が肌表面に残留している感覚がある、つまり、ジェリーアクアリスタが浸透しにくいのではないかと感じます。
ヘーラールーノも精油も分子そのものが相当に小さいので、ジェリーアクアリスタが邪魔になって浸透しないということはありません。
ジェリーアクアリスタで湿った肌を通過します。
ということで、アクアリスタは規定に従って洗顔直後に使う、を基準にしました。
※イレギュラーパターン
入浴時にブレンドオイルでオイルマッサージをした場合は温まったためかジェリーアクアリスタの浸透がかなり素早いので、オイルマッサージ後でも浸透感は高いです。
※ヴィアロームのフリクションのような精油100%の場合は、ジェリーアクアリスタの膜の上からフリクションをするのは質感的に逆と感じます。
「フリクション→ジェリーアクアリスタ」の方がフリクションが馴染むと感じました。
ふだんフリクション自体をキャリアオイルで押し込んでいる場合は、ちょっとビミョーですが「フリクション→ジェリーアクアリスタ→キャリアオイル」が落としどころかと(個人的感覚です)。
ヒト型ナノセラミド、ヒト型ナノアシルセラミド
効果が期待できないヒト型セラミドとは
ヒト型セラミドといっても
「分子量が100~300ナノメートルサイズのセラミド」
「油剤や乳化剤にしか解けないために低濃度でしか配合できない従来のヒト型セラミド」、
「油剤にも溶けにくくヒト型セラミド以上に低濃度でしか配合できない従来のヒト型アシルセラミド」。
「ヒト型セラミドと非ヒト型セラミドの両方が配合されているセラミド(※1)」
は効果が期待できません。
(※1)・ヒト型セラミドと非ヒト型セラミドの併用についてーーーーー
「ヒト型セラミド」は肌への親和性が最も高く肌の細胞間脂質のラメラ構造形成に有用とされており、「ヒト型セラミド」のみを用いると規則正しく配列することが期待できるところ、非ヒト型セラミド(異なる異性体)と混合することで規則正しく配列することが期待できず、セラミドの効果そのものが著しく低下することが分かっているそうです。
ただし、セラミドは「異なる種類を混合することで再結晶しにくくなる」上に「ラメラ構造(※2)の安定持続性が高まる」そうで、結果的に相乗効果を発揮するので、複数のセラミドを併用した商品が多くあります。
その際も「ヒト型」なら「ヒト型」との併用が好ましいとされています。
ーーーーー
(※2)・細胞間脂質のラメラ構造とはーーーーー
細胞間脂質の特徴は、「疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造」を形成していることです。
脂質が結合水(※3)を挟み込むことで水分を保持し、角質細胞間に層状のラメラ液晶構造を形成することでバリア機能(皮膚内の過剰な水分蒸散の抑制、一定の水分保持、外的刺激からの防御)を発揮すると考えられています。
ーーーーー
(※3)・結合水とはーーーーー
結合水は、たんぱく質分子や親液コロイド粒子などの成分物質と強く結合している水分です。
分かりやすいのは、純粋な水は0℃で凍りますが「角質層中の水のうち33%はマイナス40℃まで冷却しても凍らない」理由、それは角層内に存在する水の中の結合水のせいであることです。
ーーーーー
効果が期待できるヒト型セラミドとは
最も効果が期待できるセラミドは「ヒト型ナノセラミド」、そして「ヒト型ナノアシルセラミド(※4)」。
(※4)・アシルセラミドって?ーーーーー
エステルω-ヒドロキシ脂肪酸が結合したセラミドを「アシルセラミド」といいます。
アシルセラミドはラメラ構造に於いて、セラミドやコレステロールから成る脂質の多重膜を繋ぎ合わせる役目を果たしていると考えられています。
また、表皮が透過性バリアとして機能するためには高い疎水性が必要となりますが、アシルセラミドは脂肪酸鎖超が28以上(※5)で非常に強い疎水性を有していて、バリア形成に特化したセラミドであるといわれています。
ーーーーー
(※5)・セラミドを構成する脂肪酸とはーーーーー
長鎖脂肪酸は「炭素数11-20(C11-C20)まで」、
極長鎖脂肪酸は「炭素数21(C21)以上の脂肪酸」、
超極長鎖脂肪酸は「極長鎖脂肪酸のうち炭素数26(C26)以上の脂肪酸」。
通常のセラミドを構成する脂肪酸は「C16-C24の飽和または一価不飽和脂肪酸」、
表皮を構成するセラミドには「それらに加えてC26-C36の超長鎖脂肪酸も多く存在」しているそうです。
ヒトの肌に主要なセラミド成分は、脂肪酸鎖長が炭素数24などの超長鎖セラミドです。
ーーーーー
ヒト型セラミドのナノ化の有効性
通常のナノ化については、このブログのタイトル「スキンケアって?」の中にありますが、「ナノ化とは、一つの大きな分子の物質を小さくするのではなく、切り刻むことであり、つまり物質の切れ端」であり、ナノ化成分も同じくなので、通常はひょっとして本来のその成分の特徴が壊れている可能性は否めないようではあります。
しかしながらヒト型セラミドに於いてはナノ化することで効果が得やすくなります。
そもそも「ヒト型セラミド」は、
・角層細胞の外壁を形成するタンパク質の産出を促進する効果がある
・肌内部でセラミド生成に於いて重要な役割を果たすセラミド合成酵素の産出を促進する効果がある
そして
「ヒト型ナノセラミド」は、
「ヒト型セラミド」よりセラミドの効果に影響をもたらすタンパク質の産出促進効果があり、プラスSPT産出促進効果があるそうなのです。
もともと「ヒト型セラミド」は、溶液中で結晶化しやすいために、大量の油剤や乳化剤(界面活性剤)が必要となるため高濃度で配合することができません。
つまり「ヒト型セラミド」のままでは、オイルの溶媒中に低濃度でしか配合できない、その上に分子量も100~300ナノメートルサイズなので角質層への浸透力が弱く、効果が期待できません。
しかし、富士フィルムのスゴいところは、この「水にもオイルにも溶けず、結晶化しやすい性質」のせいで高濃度に化粧品に配合することができなかったヒト型セラミドを写真フィルムの分野で培った独自のナノテクノロジーにより、2種類のヒト型セラミド(※6)を世界最小サイズ20ナノメートル(0.000020mm)まで極少化、安定分散し、従来の6倍の浸透力を誇るとされています。
(※6)・2種類のヒト型セラミドとはーーーーー潤いを抱え潤いを留める「ヒト型セラミド(セラミドNP、セラミドAP)」と「ヒト型アシルセラミド(セラミドEOP)」です。
ーーーーー
「セラミド」と「アシルセラミド」それぞれの化学構造は
・通常のセラミド=「スフィンゴイド塩基と脂肪酸の2つの疎水鎖から構成されている」
・アシルセラミド=「脂肪酸部分にリノール酸を加えた(エステル結合した)3つの疎水鎖構造をもつため、炭素鎖長が28以上の超長鎖脂肪酸を有している」。
ーーーーー
また、ナノ化については、ナノ化された成分はデリケートで環境によっては劣化しやすく、製品の安定性が低くなるため、配合濃度を高めると製品の安定性を保つ安定剤や防腐剤が多くなってしまうので、おおよそは安定剤防腐剤を抑えるために成分濃度が低くなるともいわれています。
(私には事実は分かりません。)
しかし、「ヒト型ナノセラミド」は、従来のセラミドのようにオイルや乳化剤を用いる必要がないので、高濃度配合が可能となったそうです。
よって、「ヒト型セラミド」と「ヒト型ナノセラミド」を比較すると浸透率とその効果に圧倒的な差が出るそうです。
2015年発売のジェリーアクアリスタは、2010年発売のジェリーアクアリスタよりセラミドによる角層細胞の外壁を作るタンパク質とセラミド合成酵素の生成を促進する効果が具体的になったそうです。
実際、今回のジェリーアクアリスタに関しては、体感として乾燥ジワがとっとと治まり、明らかに肌が滑らかになる点で、セラミドは壊れず、成分濃度も好ましいとしたらば、広告倒れではなく、本質、さすが写真フィルム分野で培った独自のナノテクノロジーの賜物かという感覚があります。
強い有効成分よりまずはセラミドで土台の健康を
シワといえば「レチノール」や「アルジルリン」のように積極的アンチエイジングケア成分に手を出しそうですが、実は「まずは角質層の内部の潤いを閉じ込めて抱えて流失させない」方が手っ取り早いと私は思います。
よって、まずはセラミド。
レチノールやアルジルリンは、土台育成のセラミドやNMFが満たされたところにプラスするトッピングみたいなものなので、まずは肌環境を整えた上で効果を発揮できると感じます。
セラミドって?
各セラミドについて簡単に整理してみます。
バイオセラミド
「ヒト型セラミド」は、ヒト型といいますが、ヒトから抽出しているわけではありません。
主に微生物や植物由来を原料とし、酵母などを利用して生成したセラミドで、ヒトが持つ12種類のセラミドのいずれかに類似した構造を持ち、糖やリン酸が結合していない遊離の形をとります。
通常の生きた細胞には含まれない物質であり、自然界にはほとんど存在していない成分です。
植物におけるヒト型セラミドの前駆体は、グルコース結合型ではなく「リン酸結合型セラミド(酸性スフィンゴ脂質)」といいます。
このことから、ヒト型セラミドはセラミドアグリコンとは呼ばず、遊離セラミドと呼ぶこともあるそうです。
表示は「セラミドEOP(セラミド1)」、「セラミドNS(セラミド2)」、「セラミドNP(セラミド3)」、「セラミドAP(セラミド6)」など。
天然セラミド
天然セラミドと呼ばれるセラミドは動植物や微生物から抽出した成分です。
「天然」と呼ばれてはいても、動植物体や微生物からセラミド類を抽出する際に、合成の有機溶媒を使用しているので、天然100%成分というわけではなく、抽出元が天然物という意味です。
⚫動物性セラミド
動物性の場合、昔は牛から抽出されていましたが、狂牛病が起きて以来は主に馬などの脳や脊髄、もしくは微生物から抽出されています。
ヒトの肌のセラミドとは構造が大きく異なります。
馬由来の表示は「セレブロシド(セラミドにグルコースやガラクトースが結合したグリコシルセラミド)」。
「セレブロシド」は人の肌に存在するセラミド1(EOP)~7(AH)までの全てを含有するセラミドで、ヒトの細胞間脂質と同じ構造をしているため、皮膚への浸透性がとても高く、使い続けることで実際にセラミドを増やす働きが期待できるそうです。
一般、セラミドの分子量は397なので、そもそも「分子量500以下浸透」からすると充分に浸透しますが、
セレブロシドの分子量は更に小さい266だそうで、浸透に関しても充分。
ただし、セレブロシドは高価なのできちんと配合している商品はもちろん高価です。
安価過ぎる商品は嘘のように少量しか配合されていないものが多々あるようなので、使用しても意味がなく、注意です。
微生物由来の表示は「ビオセラミド」、ミルク由来は「スフィンゴミエリン(セラミドにホスホリルコリンが結合したセラミド)」。
⚫植物セラミド
植物セラミドは、コメやトウモロコシ、大豆、コンニャク、小麦などから抽出されています。
「天然」ではありますが、抽出にはやはり様々な溶剤が使われます。
これらはヒトの肌のセラミドとは構造が大きく異なる「グルコシルセラミド(糖セラミド)」という成分です。
あくまでも植物なので保湿剤として捉えたいところ。
表示は「米ぬかスフィンゴ脂質糖セラミド」、「柚子果実セラミド」など。
合成疑似セラミド
セラミドに類似した物質を化学的に合成したセラミド。
ぶっちゃけ、効果はあまり期待できない、と思います。
表示は「ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサカナミド」、「n-ラウロイル-l-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)」など。
似て非なるスフィンゴ脂質
天然(馬)セラミドや植物セラミドはスフィンゴ脂質の一種なので、一般的に「セラミド」と呼ばれます。
しかし正確にはスフィンゴ脂質はセラミドとは異なります。
スフィンゴ脂質はスフィンゴイド塩基を含む複合脂質の総称。
対して、セラミドはスフィンゴイド塩基に脂肪酸が結合したスフィンゴ脂質。
スフィンゴ糖脂質とは「スフィンゴイド塩基に脂肪酸が結合したセラミド構造に糖が結合した複合脂質」。
スフィンゴ脂質の一種がセラミド構造を有しているため「セラミド」と呼ばれるそうてます。
しかし、糖が結合していることからセラミドとは異なり、化粧品成分表示上も明確に異なっています。
・ガラクトースが結合したセラミド=ガラクトシルセラミド
・グルコースが結合したセラミド=グルコシルセラミド
化粧品に配合されたスフィンゴ糖脂質は、セラミドの主な作用である「直接的な細胞間脂質の補充」、「バリア機能の補強」とは異なっていますが、角質層のセラミド産生量の促進作用は有しています。
整理がついていない成分表上のセラミド
現在、「セラミドEOS」は旧称として「セラミド1」
「セラミドAG」は「セラミド5」と表示されることがあります。
また、「セラミド2」及び「セラミド5」の改正された化粧品成分表示名称は、
「セラミド2」の改正名称=「セラミドNG」と「セラミドNS」
「セラミド5」の改正名称=「セラミドAG」と「セラミドAS」
があります。
この背景は、もとはセラミドが7種類しか同定されていない中で「セラミド+数字」という命名法が用いられていたことによります。
化粧品成分表示名称では、化学名称には存在しない「セラミドNG」及び「セラミドAG」が存在します。
これは、
セラミドNG = セラミドNDS
セラミドAG =セラミドADS
です。
理由は、米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)で過去の一つの資料をもとに学術面で認知されていない「NG」「AG」と命名したことから、以降、皮膚科学分野と化粧品分野でダブルスタンダード化した状況になっているようです。
このややこしい状況については、複数のセラミド研究者が化粧品成分表示名称の訂正を嘆願しるそうで、米国今後訂正される可能性が高いと推測されます(2020年現在はまだ訂正されていません。
また、米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)が公表した化粧品成分の国際名称(INCI)では、「ジヒドロスフィンゴシン」と「スフィンゴシン」は同類とみなしていました。
これは「ジヒドロスフィンゴシン」及び「スフィンゴシン」を骨格とするこれらは、結合する脂肪酸の違いのみで分類していたため、どちらも同様のセラミドタイプとして分類されていたという経緯の影響もあります。
2008年に「12種類のセラミドタイプ」が公開され、セラミドの命名法も見直されました。
ここで「ジヒドロスフィンゴシン」と「スフィゴシン」も区別されます。
「セラミドEOP」の旧称は、化学名称として、「セラミド9」ですが、化粧品成分表示名称の旧称は「セラミド1」となっています。
スフィンゴイド塩基(エステルω-ヒドロキシ脂肪酸)
スフィンゴシン=セラミドEOS(セラミド1)
フィトスフィンゴシン=セラミドEOP(セラミド9)、セラミドEOP(セラミド1)
これも、セラミドが7種類しか同定されていない時にはスフィンゴイド塩基にエステルω-ヒドロキシ脂肪酸が結合したセラミドタイプはすべて「セラミド1」に分類していたことにあり、化粧品成分表示名称の旧称はそのまま「セラミド1」となっていたからです。
すみません、書きながらこんがらがってきました。
理由は背景はどうでもいいかな、現時点の名称をまとめます。
セラミド名称まとめ
セラミド1 = セラミドEOP
セラミド2 = セラミド NS (NG)
セラミド3 = セラミドNP
セラミド4 = セラミドEOH
セラミド5 = セラミドAS(AG)
セラミド6 = セラミドAP
セラミド7 = セラミドAH
セラミド8 = セラミドNH
セラミド9 = セラミドEOS
セラミド10 = セラミドNDS
セラミドADS
セラミドEODS。
ヒトが抱えるセラミドの割合は
セラミド1=セラミドEOS=8%
セラミド2=セラミドNS=21%
セラミド3=セラミドNP=13%
セラミド4=セラミドEOH=4%
セラミド5=セラミドAS=27%
セラミド6=セラミドAP=4%
セラミド7=セラミドAH=22%
と報告されています。
え?セラミド8~10、ADS、EODSひっくるめて1%??
バリア機能の回復条件
ただし、角質層の「バリア機能を担う細胞間脂質のラメラ液晶構造」はセラミド単体では形成されません。
細胞間脂質のラメラ液晶構造は、両親媒性(親水性と親油性の両方を有している性質)の脂質であるコレステロール、遊離脂肪酸などと共に形成されています。
親水性部分に水分を保持して機能を司っているので、セラミド、コレステロール、脂肪酸を単独で肌に塗布してもバリア機能の回復が見られないのです。
バリア機能の回復は、
「セラミド、コレステロール、脂肪酸を適当な比率で混合した場合」
や
「セラミドとコレステロールを併用した場合」にのみ、回復が見られます。
(セラミド、コレステロールと共にラメラ液晶形成能を持つ乳化剤が混合されている場合あり。)
ジェリーアクアリスタも「コレステロール」の配合があります。
アスタリフト・ジェリーアクアリスタの成分表
アスタリフト・ジェリーアクアリスタの成分の配合目的は公式ホームページに掲載されているので省きます。
水、グリセリン、ベタイン、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(ジェル材料、1,7%)、BG、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(APPS)、セラミドEOP、セラミドNP、セラミドAP、アセンヤクエキス、水溶性コラーゲン、加水分解コラーゲン、ヘマトコッカスプルビアリス油、トマト果実エキス、アセチルヒドロキシプロリン、加水分解シロバナルーピンタンパク、トコフェロール、コレステロール、エチルヘキシルグリセリン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-2、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸スクロース、レシチン、ダマスクバラ花油、ラウリルカルバミン酸イヌリン、オレイン酸、エタノール、香料、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、フェノキシエタノール、メチルパラベン