サンタ・マリア・ノヴェッラ オーデコロン(ザクロ、ローザノヴェッラ)/モノアミンバランスすら整える香りの効能

ーーー香りでモノアミンバランスを整えるとは?ーーー

パチュリーの精油を扱っていたら、突然、思い出したのです。
サンタ・マリア・ノヴェッラのオーデコロン。
(正式には「オフィチーナ・プロフーモ・ファルマチェウティカ・ディ・サンタ・マリア・ノヴェッラ」)

サンタ・マリア・ノヴェッラのオーデコロンについてだけ、サラリと書くべしタイトルですが
また、今時は簡単簡潔流行りですが
書いていたらついでついでに思うことあり、
私のブログの特徴である「理屈っぽい、面倒くさい、うざい」を貫いてしまいました。

大まかなテーマは、
「香りと神経科学、脳、精油、サンタ・マリア・ノヴェッラオーデコロン」。
長いので目次から抜粋読みいただいても大丈夫です。

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やっと今

サンタ・マリア・ノヴェッラのフレグランスは全体的にクラシカルなオリエンタルノートだと感じるにも関わらず、東洋だけではない、どうしてもそのルーツであるフィレンツェの石畳とクーポラ、ルネサンスを連想します。
だからといって繋ぎ目の東洋と西洋が交差するイスタンブールを感じるかというと、トルコを訪れたことがないので連想ができなくて分からない。

少しエキゾチックなノートの奥から追いかけてくるのは嫌味のない品位あるクラシックなムスキーノート、しかし重苦しくない軽やかさを秘めたシプレ調。
決してムセムセ系ではないのに甘く柔らかく温かく、そして尖らない軽快さが心地好く。

何年も前に知った時、「あ。これこそが香水のオーセンティックかも。」と感じた香り

そうしてずっと脳裏では潜在的に「好き」であるにも関わらず、長く新たな購入に至らなかったのは、「私にはまだ早い、私にはまだ不似合い」と感じていたから。
この年齢になって嗅いでみたら、脳が「今だよ」って
今の今に、今だから纏いたいと思いました。

もともと好きではあるけれど、何故、私は今になってこれを纏いたくなったのか。
何故、脳が「今だよ。」と指令したのか。

前置き・お詫び・既成フレグランスには詳しくない

ちなみに前置きをしておきます。
私は既成のフレグランスについては全く詳しくないです。
タイトルから期待外れになりましたら申し訳ありません。

私はフレグランスを纏わなくても特には気にならない人間である上に、習慣的に使っても1日1プッシュ程度につき、量的になかなか減らない、そして今日無くなっても気にならない程度のアイテムである上に、今はコレクションする趣味がないので、多岐に渡って考察する機会がなく、詳しくないのです。

解剖学的に香りが脳に精神に作用することを知っていて尚、気持ちを香りに委ねようとか救われようという気持ちになったことがないので、必要不可欠でもないのです。

このスレッドは、
なのに、「それを今使いたい」と思う理由は知りたい、
だから香りの伝達と作用を化学的、神経科学的に確かめたい、
へと流れました。

完全解明は成されていませんが、香りの「脳」、特に「感情の脳」への作用については非常に興味深く、後記に書いてみますのでお付き合いくださいませ。

大切な「合う合わない」「好き嫌い」

大まかな「好き」は自分に正直に

そんな私はどうチョイスしているのか。
何故それをチョイスするのか。
感覚的なものなので、まともな説明はできません。
ほぼ感性や感情、性分、本能、無意識に求める救い、そんな中でのチョイス。

私個人的なことには興味を持てないかと思いますが、他人のチョイスの理由までは分からないので、致し方なく例えば私の。

17才の時、初めて手に入れたフレグランスは、かの「シャネルNo.5オーデパルファム」。
これは父の友人のパリ土産で、父世代が思い付く限りのベタもベタな「モンローのネグリジェ」なんですね。
No.5はトップにシトラスが来るから若い時でも馴染めるけど、追いかけてくるノートは怪しい「フローラルアルデヒド」。
フローラルといっても香りの王様「ローズ」と「ジャスミン」だから若さにそぐわず重たい。 
加えて「アルデヒド(カルボニル基、酸素、水素の有機化合物)」は香りの効能促進剤の役割を果たす薬味のようなもの。
しかもラストに甘い甘いバニラが加わっているからには17才で使いこなせるわけもなく、クローゼットに忍ばせたままでした。
けど、この初めての香水No.5こそが私にとっての「香水ってこんな」の指標になったと思います。

その後は時代背景もあって、20代~30代の頃(80年代~90年代)に常に15~20種類、もしかしたら30種類ほども備えていました。

常に15~20種類も抱えていると、当然使わずに放置しているものが発生し、末はどうなるのかも、もちろんよく知っています。
けど、人というのは必要がないくらいに様々に試すことで、「よく分からない世界の全容」が垣間見えてきて、好みが分かるようになり、チョイスしやすくなります
洋服や靴と同じ感覚です。
なんでも試したい。
結果、私は女性らしいムセかえるような芳香より、ユニセックス香の方が好きであることは分かりました。

いわば成り立ちが香水ブランドの化粧品メーカーのベタな中であれば、女性らしさが際立つゲランやランコムやディオールより、ユニセックスでありながら複雑に爽やかさと重たさが絡み合った香りが多々存在するシャネルが好きだと判明。

結局、今でもシャネルのアリュール系やココマドモアゼル、チャンスを使うに至ります。

さ迷ってもそこに戻る「好き」

人の好みは、置かれた環境やその時々、取り巻く有形無形のものによって、「しっくりする香り」や「いやだと感じる香り」があることは分かります。
意識しなくても脳が勝手に反応します。

また、以前は嫌いだったのに今は落ち着く、または惹かれる香りになる得る変化も体感はしています。

なので、もちろん好みが判明して尚、好奇心はあるので、たまに様々に試してはみます。

個性的なオトナなムスク「ナルシソロドリゲス」、
官能的な「サンローランモンパリ」、
ビオニーの花香と爽やかなリンゴ香にムセかえるジャスミンやローズを重ねている点でなんとなく媚びを感じる捻りに惹かれた「ジョー マローン ロンドン ピオニー & ブラッシュ スエード コロン」などなど。
選んだ時は惹かれたのですが。
結局はこれらは私は自分らしさを失って居心地が悪くなるから、せっかく持っても滅多と使わなくなります。
そして結局、複雑ユニセックスな香りに戻ります。

根源にある「らしさ」からのチョイス

では、「らしさ」って何よ?
ったって、個々様々です。
自分の「らしさ」ですら、何なのか、説明はつきません。
多分、その気になれば誰もが「なりたい自分」になれるので、「自分らしさ」なんぞはただの思い込み、好みの自己のプロデュースなのだとは思います。

ある日、
「私に一番似合わない髪型は、ロングのフンワリ巻き髪。」
と言った時、あまりに的を射ている点で爆笑されました。
これこそが私が私自身で自分をプロデュースした結果です。

そして言われます。
「いや、顔に似合わない感じはない。」
「あなたという個を知っている人から見ると似合わないだけやろ?」
ってことは、初対面の時にロングのフンワリ巻き髪のエレガンス系で全身をまとめておくと、その初対面の人には違和感がないのでしょう。
が。
私にはもはやコスプレ。
自身が気持ち悪く居心地が悪いのでしょうね。

他人が私をどう捉えるかは他人の自由。
自らが居心地好いイコール自分らしさではないかと思うし、もちろん、ただ「なりたい自分」を具現化しているだけでもあります。
香りはそのアイテムの一つとして、私には女性らしさが際立つ香りに居心地が悪くなるのです。

これは性分や性質、思考、それらから出来上がった嗜好などに合うか合わないか、みたいな軸かも知れません。

時々に合う合わないは素直に「イヤ」か「心地好いか」がバロメーター

既成のフレグランスもですが、天然精油も単体、ブレンドに関わらず、「イヤだ」と感じる香りを無理に嗅いだり塗布したりしてはいけません

それは好みの問題より手前にある問題。
脳のバランスに合わない
のです。

その時々、心地好い香り、ひいては居心地好い香りこそが自身が求める香りです。

面白いことに漢方薬も同じで、健常時には苦いのに、辛い時には甘いものこそが合っているそうです。
例えば風邪気味の時には葛根湯が甘い、みたいな。

また、漢方薬もフレグランスや精油と同じく、「効能だけによるチョイスは当たらない」そうで、「その人に合う合わない」があるから、なかなかにドンピシャは難しいけど、ドンピシャに当たればめちゃくちゃ効きます。

こう書くとチョイスが難しいと感じられるかも知れませんが、肩の力を抜いて素直に本能のままに捉えるだけでいいと思います。
シンプルに「心地好い」、これだけでほとんどが大丈夫です。

神経科学的に理由があるはず、あって欲しい

おまじないではない、きっと

精油について、私はもともとは塗布による血中への吸収からの効果しか信じていませんでした。

たとえ香りの分子を嗅覚がキャッチすると「大脳辺縁系」や自律神経系を司る「視床下部」に情報が伝わると知ってはいても。
「嗅覚」が五感の中で唯一、脳にダイレクトに伝わると知ってはいても。

おまじない系のものを笑い飛ばす私には、香りなんかに脳(心)が影響されるわけがないとすら思っていたし、それは神経科学的解析がほとんど行われていなかったのも原因です。

そんなかれこれ20年近く前は、ネットではまだ今ほどに情報がなかったため、紀伊国屋書店やら旭屋書店で数万円もする専門書を抱えて調べてみたら、お坊さんの名前か、かつての暴走族みたいな細胞名の羅列は、およそアロマテラピーな気分ではなく、理解に時間がかかって、一体、何を知りたいのかさえ分からなくなって簡単にへし折れました。

一応
系統発生的には、視覚などの他の感覚に頼ってきたヒトでは嗅覚はあまり発達しないままで、生物の感覚として古いそうです。

下記、全然面白くないので流してオッケー内容。

「ヒトの鼻の粘膜の特定の場所に嗅上皮があって、そこに5,000万個の嗅神経を含んでいる」

「嗅神経の軸索は篩骨の篩板を通って嗅球に投射している」

「嗅神経の樹状突起の先端(嗅小胞)にある6~12本の線毛は鼻腔内に伸び、嗅覚受容体を持つ」

「嗅球では嗅糸球体を形成していて、糸球体周辺細胞が存在(嗅神経の軸索が僧帽細胞と房飾細胞の主樹状突起に達して嗅糸球体を形成)」

「一つの糸球体を他の糸球体へ結合している」

「シナプスで僧帽細胞もしくは房飾細胞が神経伝達物質グルタミン酸を放出して顆粒細胞を興奮させる(顆粒細胞で僧帽細胞と房飾細胞の副樹状突起との相反性シナプスを形成している)」

「顆粒細胞は神経伝達物質GABAを放出して僧帽細胞または房飾細胞を抑制する」

けど、10年近く前から自身のためだけでなく、人様の分も含めて何種類もの精油を常時抱えて扱う環境になって以来、確実に香りそのものに「何かがある」ことに気付きだし、また知りたくなった次第です。

そして以降、「嗅覚受容体」の存在が証明されて以来、嗅覚に関する研究が盛んになりました。
精油の香りについて、現時点ではまだまだ全ての神経科学的証明は成されてはおらず、「人知を越えた」と表現されますが、いつか証明されたら、もうカケラもおまじないではなくなります。

以下、現在分かっている事項の一部です。
ソースはほぼ「アロマと自然療法の学際的専門誌アロマトピア(フレグランスジャーナル)」

精油と自律神経

香りを嗅ぐことで、中枢神経系を「刺激」もしくは「リラックス」させる効果を持ちます。

香りは自律神経系の交感神経系、副交感神経系に作用します。
交感神経系=ストレスまたは緊張状態に働き、心拍数や呼吸数や血流量の増加、血圧の上昇、消化運動の抑制などをを引き起こします。
副交感神経系=リラックスした状態で働き、心拍数や呼吸数や血流量や血圧の低下を引き起こし、消化運動を活発にします。

香りの情報は内分泌系を介してストレス状態や免疫能に影響を与えます。

つまり香りは「嗅覚と感覚認知」に影響を与え、「自律神経系や内分泌系、免疫系などにも作用」し、生体機能の調整に関与すると考えてもよいそうです。

ーーー
<リラックス状態>

グルココルチコイドの産生、分泌低下

免疫能が増強

ーーー
<ストレスが負荷された状態>

視床下部からのコルチコトロピン放出因子の分泌促進

下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン分泌

副腎皮質からグルココルチコイド分泌

免疫能の低下
ーーー

香りと脳内因子

香りを嗅ぐと脳内因子に変化は生じるか?

<ストレスによるうつ病発症に至る過程の脳内変化>は、
ストレスによって分泌促進されたグルココルチコイド
+
ストレスによって生じる脳内遺伝子、タンパク質の発現変化

脳に作用して海馬の神経細胞の退行性変性を引き起こす

ストレスで海馬が委縮した状態に至る=うつ病

神経の成長、維持に重要な役割を果たす神経栄養因子受容体(NGFR)や脳由来神経栄養因子(BDNF)はストレスによって低下するため、神経細胞死が起きるといわれています。

そして
ラベンダーの香りは脳内の神経栄養因子受容体(NGFR)遺伝子の発現を増加させ、
様々な精油に含まれている「α-ピネン」の香りを嗅いだ海馬では、脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現レベルが上昇したそうです。
(「行動科学的解析」も必要になりますが、はしょります。)

よって、香りのストレス抑制効果は、実際に脳内因子の発現を変化させることによって発揮されるものであることも分かってきたようです。

脳と神経伝達物質

脳の働きはほとんど解明はされてはいません。
大脳皮質についてはかなり可視化されたといわれていますが、脳幹についてはまるで分からないそうではあります。

だから説明が難しい
何故、同じ香りが時々でイヤだったり心地好かったりするのか。
何故、受け付けない香りがあるのか。
何故、常に心地好い香りがあるのか。

脳は
・「大脳皮質(考える)」=認識、言語、思考、判断、記憶を司る

・「脳幹(間脳(視床))、中脳、橋、延髄)(感じる)」=無意識の活動(呼吸、血圧、脈拍、体温、排泄)を司る

簡単にいうと、「考える脳」と「感じる脳」に分かれています。

この2つは常に「神経伝達物質」によって連動しており、大脳皮質は脳幹からの情報をもとに決定を下し、また脳幹を通って視床下部へ、視床下部から内分泌系や自律神経系へと伝わっていきます。

この「神経伝達物質」は3つに分けられます。

1・モノアミン系=感じる脳に存在
・ノルアドレナリン(元気)
・セロトニン(安心)
・ドーパミン(満足)
(厳密にはアドレナリン、ヒスタミンなども含みます。)

2・低分子アミノ酸系=考える脳の活性
グルタミン酸(興奮系、アクセル系)
GABA(ガンマアミノ酪酸)(抑制系ブレーキ系)

3・高分子ペプチド系=考える脳に存在
・アセチルコリン(集中力、経験の記憶、睡眠時に記憶保存不要消去(PC再起動的な)、覚醒睡眠)

神経伝達物質は、その時々の精神状態と密接に関わっています
脳内での量や動きを測定することは不可能ですが、作用については、モノアミン仮説や受容体仮説があります。

これは、「まるで違う!」と叱られるかも知れませんが、連動している点も踏まえると、捉え方としてはちょっと
漢方に於ける「気」「血」「水」と通じていると思われます。
ノルアドレナリン不足は「気虚」、セロトニン不足は「気鬱」、ドパミン不足は「気逆」といった感覚。

もっと話が逸れるかもですが、
アーユルヴェーダのトリ・ドーシャ「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」。

ナチュラルなモノアミンバランスの保持は精神バランスの保持

無意識の感情の起伏や行動は、モノアミン系の3つ「ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン」のバランスが影響しています。

このモノアミンバランスの変化が脳幹から視床下部と下垂体を経て、内分泌系と自律神経系を介して臓器を含む身体の隅々へと伝達されます。

モノアミンの「ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン」は連動して各分泌量を変化させていると考えられています。

刺激やストレスを受けると、それから逃れたり立ち向かうために元気ヤル気のノルアドレナリンが増加し、それに伴ってセロトニンも増加。
(この時のセロトニン増加の理由は、
刺激やストレスによる不安や焦燥感にブレーキをかけようとしてストレス防御反応を円滑にするためです。)

しばらくすると満足のドーパミンも増加。
ドーパミンはストレスから逃れたり立ち向かったりする気持ちを維持します。

通常、こうして一つが増加すると、他の2つが増加、もしくは減少して、全体のバランスを保つ作用を持ちます
このようにモノアミンは常に揺らいでいますが、それが一定範囲である場合は健全です。

常軌を逸した状況下などではこのバランスを保てなくなって崩れてしまい、様々な症状が出てきます。

バランスを保てる範囲は多分に人によって差異があり、または常軌を逸した状況も人や経験値によって受け止め方はそれぞれとなりますが、とにかく、これらモノアミン系のバランスは精神を保つバランスでもあるのです。

過剰増加、過剰減少による症状

ノルアドレナリンの急激な増加は動悸息切れ、パニック障害に繋がり、最終的に大量に放出してしまった結果、気力を失ったり疲れやすくなるなどの枯渇状態になります。

セロトニンの分泌を促す物質に睡眠ホルモンのメラトニンがありますが、このメラトニンが不足するとセロトニンが減少して睡眠障害になります。
また、不安感や焦燥感、これがひいては攻撃的衝動的な行動が現れます。
逆に増加し過ぎると興奮や錯乱、混乱などの症状に繋がります。

ドーパミンは増加し続けると多幸感が現れるため、依存症の原因になります。
逆に減少し過ぎるとパーキンソン病に繋がる場合もあるそうです。
また、ドーパミンの減少によって、ノルアドレナリンやセロトニンはそれ以上に減少することがあります。

そして、モノアミンバランスの崩れ(偏り)はグルタミン酸やGABA、アセチルコリンなどにも影響を与え、その影響が持続すると精神が疾患していく場合もあるそうです。

モノアミンがバランスを保つために欲する物質

ヒトは外部からモノアミンのバランスの崩れ(偏り)を元に戻す術も持ちます。

例えばノルアドレナリンの補足にカフェイン(無糖コーヒー)やデオプロミン(無糖カカオ、ビターチョコ)、
セロトニンの補足にニコチン、ドーパミンの補足に糖分やアルコールを摂取しようとします。

しかし、何かの過剰摂取は別の悪い作用や不具合をもたらすので、適量、適宜を体感で見つけます。

香りの力

ここでやっとタイトルへと向かいますが、ここからはモノアミンバランスを整える香りについて。

香りとは、ここでは天然の精油を指します。
クオリティの高いフレグランスも、もともとの原材料はほぼ精油です。

(雑多な扱いに見える写真ですみません。
本当の精油ケースでは嵩張り過ぎるし、どれも猛スピードでなくなるので、ギッシリ詰めている箱を縦にして写しました。すぐに見つかるようにフタに「お名前シール」を貼っています。)

香り(精油)の一般的効能は人による

多分にモノアミンバランスの揺らぎこそが、「時々による好みの香り」「時々に欲する香り」が生じさせるのだと思います

先に
「症状には合っているはずの香りでも、その人に合わない香りは効かない」
と書きました。

「症状に合う」は精油中の化学成分から割り出されたものではありますが、「伝承的決まり」であるものが多くあります。
しかし、伝承より「その人に合うか合わないか」が最も大切であり、合うか合わないかで効果は大きく違ってきます

伝承的決まりによるチョイスだけでは必ず違和感に突入します。
これこそが精油がおまじない並みに怪しいと思われ勝ちな根拠ではないでしょうか。

私はそもそも得体なき根拠なき実証なき胡散臭いものを信じることができない性分です。
あらゆることにマインドコントロールもされにくく、非常にノリが悪い。
そんな私が何故、もしかしておまじない?みたいな精油は扱うのか。

伝承的決まりによる効能ではなく「時々の好き」で選択したものに効果を体感したことに面白さを感じたからです。
また、確実に血中に入るため、選択によっては合わないリスキーさを抱えながらも、合った時には確実な効果を感じるからです。

また、面白いと思ったから最初は子供がオモチャを集めるように思うがままに様々な精油、80~100種類ほどの精油を集めて、それぞれ単体の感覚やシナジー効果を楽しんだ末、伝承的決まりだけではまとめ切れない可能性を感じました。

私は例えば「鎮静作用」の代表とされるラベンダーに顔を突っ込んでも特には何も感じません。
精度の高い真正ラベンダーには、むしろ高揚感を持ちます。
しかし同じく「鎮静作用」を持つベチバーは、伝承通りに落ち着き、数滴だけで眠くなります。

普段は必要がないのでしょう、クラリセージを嗅ぐと気分が悪くモヤモヤしてきますが、疲れている時には芳しいと感じるので、その時々のバロメーターになります。

モノアミンのバランスを保つ精油

それらを踏まえて

人それぞれ、それぞれの性分や思考、嗜好によることは体感しています。
だからこそ、私は香りにもあくまでも「おまじない」ではなく、脳科学からの理論がなければ信頼ができません。

漢方のチョイスも症状だけではなく、その人が持つ体質や思考、環境などなどから割り出した「人それぞれ」に処方されますが、香りにも「人それぞれ」が必要です。

よって、以下はある程度の裏付けもある「一応」の一部ですが、絶対ではありません。
参考にはなると感じます。

ノルアドレナリンに作用する香り

いわばリフレッシュ、集中力、高揚感を高める香りです。

・ジャーマンカモミール(Matricaria recutita、Matricaria chamomilla)
キク科
α-ビサボロールオキサイドA(40%以上)、α-ビサボロール、α-ビサボロールオキサイドB、カマズレンetc
カフェイン様作用によって、ノルアドレナリンを増加します。

・カンファー(Cinnamomum camphora)
クスノキ科
1.8-シネオール、サビネン、カンファーetc
香り成分の「樟脳」から作られた有名な強心剤(カンフル)からカンファーと呼ばれます。

・ローズマリーカンファー(Rosmarinus officinalis ct.Camphora)
シソ科
α-ピネン+β-ピネン、カンファー、カンフェン、1,8-シネオールetc
ベルベノンやシネオールよりカンファー含有率が高いローズマリーカンファーは、元気付け成分です。

・グレープフルーツ(Citrus paradisi)
ミカン科
リモネン(~90%)、β-ミルセン、α-ピネン、ヌートカトンetc
主成分「リモネン」が交感神経を亢進、ひいてはノルアドレナリンを増加します。

・マンダリン(Citrus reticulata)
ミカン科
d-リモネン(60~80%)、γ-テルピネン、α-ピネンetc
交感神経を亢進、ノルアドレナリンを増加します。
 

セロトニンに作用する香り

安心をもたらす香りです。

・ペパーミント(Mentha piperita)
シソ科
ℓ-メントール(35~45%)、ℓ-メントン(15~25%)、1,8-シネオールetc
含有するメントールは、ドーパミン増加と共にセロトニン増加作用を持ちます。

・ビターオレンジ(ダイダイ)(Citrus aurantium)
ミカン科
リモネン(96.10%) β-ミルセン、リナロール、β-フェランドレンetc
一度使うとスウィートオレンジが物足りなくなる深いオレンジ香です。
漢方の「陳皮」である果皮を圧搾して得ます。
ビターオレンジはセロトニン増加による抗不安作用が実証されています。

・ベルガモット(Citrus bergamia)
ミカン科
リモネン(30~40%)、γ-テルピネン、酢酸リナリル(20~30%)、リナロール(10~15%)、ベルガプテンetc
完熟前の青い実の果皮から抽出。
アールグレイ(紅茶)の香り、
酢酸リナリルによる中枢神経の抑制作用や神経バランス回復作用から、抑うつ状態に効果があります。

・マージョラム(Origanum majorana)
シソ科
テルピネン-4-オール(20~30%)、α-テルピネオール、γ-テルピネン、サビネン、α-テルピネン、リモネンetc
ティートリーに似たスッキリした香りが不安を除去してくれます。

・ジュニパーベリー(Juniperus communis)
ヒノキ科
α-ピネン(30~40%)、ミルセン、β-ピネン、サビネンetc
ジンの香り付けで有名で、森林を思わせる爽やかウッディーな香りです。
時間差で異なる作用を持ちます(まずリラックス作用、経時で集中力上昇)。
古くから心身の浄化に使用されてきました。
脳がクリアーになります。

ドーパミンに作用する香り

満足感、多幸感をもたらす香りです。

・ゼラニウム(Pelargonium graveolens)
フウロクソウ科
シトロネロール(~50%)、ゲラニオール(~20%)、リナロールetc
抗うつ、女性ホルモン調整、自律神経のバランス調整、ストレス性の不調調整、更年期症状の緩和。
ゲラニオールにはドパミン増加作用があります。

・パルマローザ(Cymbopogon martinii)
イネ科
ゲラニオール(75~85%)、リナロール、酢酸ゲラニル
「疲れた心を癒し、活力を与える」鎮静作用と高揚作用を持ち併せ、心の感情のバランスを調整。
ゲラニオールにはドパミン増加作用があります。

・ローズ(Rosa centifolia/Rosa damascena)
バラ科
Rosa centifoliaキャベッジローズ(溶剤抽出法)=フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロールetc
フェニルエチルアルコールによる芳香が高い、不安感除去、多幸感高い
Rosa damascenaローズオットー(水蒸気蒸留法)=シトロネロール(~50%)、ゲラニオール、ネロール、リナロールetc
シトロネロールによる鎮静作用が高い
どちらも脳内ホルモンのオキシトシン(幸せホルモン)の分泌を促して自律神経のバランスを整え、ストレスを緩和し、気持ちをポジティブにします。
ゲラニオールにはドパミン増加作用があります。

・クラリセージ(Salvia sclarea)
シソ科
酢酸リナリル(~67%)、リナロール、ゲルマクレンD、スクラレオールetc
エストロゲン様作用を持つスクラレオールにはホルモンバランスを整えて女性特有の不調の緩和に効果を発揮。
脳内ホルモン「オキシトシン(幸せホルモン)」の分泌を促し、自律神経のバランスを整えて心の安定をもたらし、幸福感を与えます。

・クローブ(Eugenia caryophyllata/Syzygium aromaticum)
フトモモ科
オイゲノール(75~85%)、酢酸オイゲノール、
β-カリオフィレン、カリオフィレンオキサイド
刺激や高揚作用を持つため、落ち込んでいるときや、気力を高めたいときなどに効果的です。

GABAに作用する香り

リラックスをもたらし、興奮を鎮める香りです。

・真正ラベンダー(Lavandula angustifolia/Lavandula officinalis)
シソ科
酢酸リナリル(~45%)、リナロール、酢酸ラヴァンデュリル、β-カリオフィレンetc
リナロールや酢酸リナリルは、GABA系の中枢神経抑制作用があり、副交感神経を刺激して、抗不安作用に効果が期待できます。
睡眠導入剤として処方されるベンゾジアゼピン系薬剤の作用機序からもそれは信頼できるようでさかさ。

・レモングラス(Cymbopogon citrarus)
イネ科
ゲラニアール(~54%)、ネラール(~35%)、シトロネラール、リモネンetc
レモンに似た香りですが、レモンの尖りを抜いて少し草っぽい苦味と爽やかさが渦巻く香り。
疲れを癒して解放してくれる反面、脳を活性化して集中力や記憶力を高めます。
程よいリラックスとリフレッシュ作用。
GABA受容体を介した抗不安作用が報告されています。

アセチルコリンに作用する香り

まず。
認知症は海馬のダメージによる物忘れで周囲が気付き出しますが、物別れ以前に嗅覚障害が起こります。
よって、「臭いを感知する神経」と「海馬」が密接に連携している可能性があるかも知れない、とされました。
そして精油の香りで「嗅覚を刺激する」ことで「臭いを感知する神経と連携している海馬も活性化」し、ひいては「認知症予防や認知機能が向上する可能性」が明らかになっています

そして。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、脳内に於いてアセチルコリンが減少し、グルタミン酸が過剰になることが知られています。
(よって、西洋医薬ではアセチルコリンを分解する酵素アセチルコリンエラスターゼの働きを妨害する作用を持つものと、過剰なグルタミン酸の放出を抑えて脳神経細胞死を防ぐ作用を持つものがあります。)

予防段階、もしくはお薬に抵抗がある場合に期待できる精油は
アセチルコリンエラスターゼ活性への影響が報告され、記憶障害を改善するローズマリーカンファー
+
アセチルコリンエラスターゼ阻害活性が報告されているレモン(Citrus limon)
+
側頭葉から前頭葉にかけて脳血流量が増加して、脳の働きが活発になり、集中力が高まるスウィートオレンジ(Citrus sinensis)
+
グルタミン酸の放出を抑制する「リナロール」が含有された真正ラベンダー、ネロリ(Citrus aurantium)、イランイラン、ローズウッド、ベルガモット、クラリセージ
+
そして認知症を発症した人は、モノアミンの偏りが発生していると考えられているそうです。
よって、ノルアドレナリンやセロトニンを増加させる精油との併用(同じ精油多々)にも期待できます。

人知を越えるシナジー効果(相乗効果)

1つの精油の中には、100種類程度の様々な化学成分が含まれています。
よって、数種類をブレンドした場合、数100種類の化学成分が集まったものになります。

その成分同士が相互に作用し合うと、新たな効果が生まれるとされていますが、これをシナジー効果(相乗効果)といいます。
「いくつかの精油成分がお互いにその作用を強め合う効果」を指します。
よって、正しくは「精油のシナジー効果」ではなく、「精油の化学成分同士の強め合い作用=シナジー効果」です。

ただし、精油を混合しただけでは化学反応は起こらず、精油が持つ化学成分が生体にある複数の作用点に相互作用するため、効果が生まれるメカニズムや理論は解明されてはおらず、分析化学の能力を越えていて、(私には)残念なことに「科学的には解明できない精油化学成分間の相互作用」ともいわれています。

しかし、シナジー効果(相乗効果)は単独の効果の和よりもっと「予想以上の強度の生理活性が発現することがある」のです。

ちなみに「相加効果」という言葉もありますが、これは「足し合わせる程度の効果」になります。

また、精油成分に毒性や刺激性などのマイナスの効果が相殺的に働いてマイナス面を弱め合うことを「クウェンチング効果(拮抗効果)」といいます。
指します。

しかし、シナジー効果もクウェンチング効果もメリットになることもあれば、反対にデメリットになることもあります
ここが難しくて、
化学成分がお互いに接触する相互作用により、両方の効果を強め合ってシナジー作用が起こる

しかし医療的には禁忌など好ましくない場合もある ↓
なのでシナジー効果が生じないようにブレンドする場合もある

けど、明確な解明がない、といった厄介さ。

精油は知れば知るほどに奥深く複雑で、何年経っても勉強中につき、またはもっともっとを求めたくなります。

フレグランスの濃度、適度

フレグランスの一般的な濃度は、

・パルファン 20~30%、持続は5時間~半日

・オーデパルファン 7~15%、持続は5時間くらい  

・オードトワレ 5~10%、持続は3~4時間くらい

・オーデコロン 2~5%、持続性淡い

とあります。

しかし、そのフレグランスによりますが、実際は「オーデコロン」でも10時間以上持続するものが多くあり、「オードトワレ」は半日以上は香っていると感じるものがあります。
「オーデパルファン」になると、丸一日、シャワーを浴びるまで香ります。

フレグランスは、香り過ぎると周囲を不快にさせることは分かります。

もう数年前になりますが、自分では気付かず香りを過ぎた失敗は、大好きな「シャネル アリュール」の「オードゥトワレ」ではなく、「センシュエル オードゥ パルファム(ヴァポリザター)」でした。
購入時には「オードゥトワレ」より「オードゥパルファム」の方が円く感じたのに、使い出してみると、香りが強く持続が長く、最初の頃は自分では気付かなかったので、「香水臭いヤツ」になっていることに気付きました。

フレグランスは弱いものは上半身、強いものは下半身に。
香りは付けるものではなく「纏うもの」なので、「体の前でシュッと一吹きした中をゆっくり歩いて纏わせる」程度が理想だそう。
大好きな香りなのに自分では香らないと嘆きたくもなる淡さだけど、たまに風に乗って香った時にニンマリします。

※不思議なのは、精油を使って自分で作るマルチスプレーの濃度は、高い場合で20%以上。
ディープに香る精油の場合は調整しながら低くしますが、15%を下ることはないのです。
しかしながら、全く既成のオーデパルファンほどには持続的しません。
これは熟成期間の違いなのか、
もしくはやはり、フレグランスとしての作り方の違いなのか、
精油だけではない何か単離された強い香り成分のせいなのか、
もちろん、簡単に同じように自作できるのであれば既成の長所がなくなるわけで、当たり前ではありますが、謎です。※

サンタ・マリア・ノヴェッラ  オーデコロン

ザクロ

昨年末、私が香りたかったのは、サンタ・マリア・ノヴェッラの「ザクロ」。
「ザクロ」のフレグランスは私の中ではイコールサンタ・マリア・ノヴェッラそのもの。
30年くらい前に「好きなのに不似合い」と感じ、背伸びしているであろう自分を滑稽と感じた香り。

甘い。
甘いのにムセない。
ムセないけど重厚。
温かい。
オーセンティックなパフューム。
ちょっとお転婆なのにクラシカルエレガンス。

提示されているノートは「オリエンタルフローラル」。
私は、ベースに特徴ある苔、トップに深みある柑橘のベルガモットである点シプレ調だと考えます。

シプレ調はゲランのミツコが有名ですが、それよりカジュアルな。
女性らしさはあるのにサバサバした感覚。
私が持つ中ではかなり甘めだけど、作られた甘味ではなく熟した甘味で、結果的にベタつかない。

ちなみに
フルーツの「ザクロ」のイメージとはかけ離れています。

最初は新鮮で爽やかなスパイスと柑橘

追って纏いつく独特のザクロの香り

そして裏切るようにローズとイランイランが被さって 

最後にそのブレンドとして最も長引くベースノートは
スモーキーで異国エキゾチックな土っぽいパチュリー、
ムスク調の怪しさ漂う「ラブダナム(ロックローズ、シストローズ)(ハンニチバナ科)」、
抽出部位が「苔(レジノイド抽出)」という「一般的優しく芳しいアロマ」とは無縁ともいえる官能的なオークモス(サルオガセ科)。

昨年の年末は疲れているとは全く感じなかったけど、ゆったりと安心感に浸りたかったのかも知れません。
この「ザクロ」には、モノアミンのバランスを整えて幸せ感に浸れる優しい強さを感じます。

一度纏うと想定より持続します。
午前中、首筋に一吹きしたものが、風に乗ると夕方になっても自分の鼻にしっかり香って来ます。

この「ザクロ」はサンタマリア・ノヴェッラの固形石鹸にもあります。
嗅いだだけで心地好い点で、昔はよく友人に贈りました。
下着などの引き出しに入れておくと、幸せ下着の出来上がりです。

〈全成分=変性アルコール、香料、水〉
香料
トップ=ベルガモット、ビターオレンジ、フレッシュスパイス
ミドル=ザクロ果実、ローズ、イランイラン
ベース=オークモス、ラブダナム、パチュリ、ムスク

ローザノヴェッラ

もう一つ、凡庸ではないものを探していたら、ネーミングに裏切られた「ローザノヴェッラ」
「ローザ」と付くとムセムセかと思ったら大間違いの正反対でした。
(注・「ローザ」というフレグランスもありますが、そちらはムセ系です。)

こちら、本当にシャネルのアリュールを彷彿とさせます。
セクシュアルだけど媚びない、縦糸が品位と爽やかさ、横糸が色気と茶目っ気、みたいな感じ。

なんでも、5月のサンタ・マリア・ノヴェッラ・ガーデンの香りだそうです。

最初は馴染み深いレモンとフローラルウッディなビターオレンジの葉(プチグレン)の香り。

追って深く甘いキャベッジローズ
そして
怪しく纏いつくジャスミン
同時に香るクチナシ。
クチナシの精油はありませんが、うまく言えないけど「イランイラン+ローマンカモミール+マンダリン+ジャスミン」みたいな香り。
「女+女の子+男気のある女+女女」みたいな。

持続のベースは
スモーキーなパチュリ
重甘くて凄みある熟年女みたいなサンダルウッド
オリエンタル調へと導くスウィートスパイシーなシダーウッド
追いかけてくるムスク。

どちらかというと元気に歩きたい時に。
高揚する種類。
ノルアドレナリン刺激系、そしてドーパミン放出、次第にセロトニン増加
といった感覚です。
私は気さくなカジュアル時に手が伸びます。

〈全成分=変性アルコール、香料、水〉
香料
トップ=レモン、プチグレイン
ミドル=キャベッジ(センティフォリア)ローズ、ジャスミン、クチナシ
ベース=パチュリ、サンダルウッド、シダーウッド、ムスク

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